春眠暁を覚えず、とはよく言ったものだ。 目の前の毛布のかたまりにため息をつく。「…きこえてるんですけどー」 かたまりの中からくぐもった声が聞こえる。息苦しくないのだろうか。
「起きているなら早くベッドから出てくださいフラン君」 返事がない。フランはいつも都合の悪いことはごまかす。 どうやら彼は死んだふりをするカエルの一種らしい。 「スクアーロさんが呼んでいるのでいい加減冬眠から覚めて欲しいんですけど」
廊下でスクアーロさんにばったり会ってしまったのが運の尽きだと思った。 彼の頼みなので断りはしないがはフランが苦手だ。 毒を吐いたり正直は正直なんだけどベルとは違う掴めなさがある気がするので 年下の彼には敬語で話す。つめたい壁をつくるように。
部屋の分厚いカーテンを開けると太陽が高い位置に来ていた。 明るい日差しを浴びた毛布は眩しそうにもぞもぞとすこし動いた後、反応がなくなった。 どうやら本気で二度寝をかまされたらしい。
「…最後の手段、使いますよ」言うが早いか、毛布をひっぺがす。 フランは小さく舌打ちをして胎児のようにぎゅう、と縮こまった。
「起きているじゃないですか」
「めんどうなのでさんがあきらめてかえるようにしたんですー」
上手く舌が回らないのか、むにゃむにゃと眠そうに喋る。 目もいつも以上に開いていない。
「今日は一日寝るって決めてるのでー、おやすみなさい」
目にもとまらぬ速さでの抱えていた毛布を奪い返すと頭から被り、 結局元のかたまりに戻ってしまった。 ベルにカエルを被らされてからどんどんそれに近付いていっている気がする。 今の動きもまるで獲物を捕らえるカエルそのものだ。
「フラン君が行かないと私が怒られるので。起きないとボスn 「あーそれちょっと困ります」「「ぐえっ」」
毛布から細い腕がにょっきり出てきたかと思えばそれに掴まれて バランスを崩したはかたまりの上に倒れ込んだ。
「え、あ、すみません」と退こうとするから腕はまだ放されていない。
「重い。違いますこっちですー隠れ肥満」
下のかたまりが声を発する度に振動が伝わる。直後、伸びた腕がをすぐ隣に降ろす。
「…放してください」 「共犯ってことでー、ボスとロン毛には秘密です」 毛布から顔を出してそれだけ言った後、腕を引っ込めた。
「私がボスに何をすると思ったんですか」
「そうですよねさんにはそんな権限ないですもんねー」
「え、何か話が通じていない」
さん無理して敬語使わなくてもいいと思いますー」
半開きの目でじっと見つめてくるフランには何かを見透かされている気がした。 この感覚が苦手な理由のひとつでもあるのだ。
カエル頭を被っていないフランの顔がいつもよりずっと近いので なるべく平静を装って背を向けた。
「…あ、眠い」
「だから寝てろって言ってんだよ エセ冷血女」
スクアーロさんごめんなさい、悪いのは背中の寝惚け眼のカエルです。
でも自分の体温以外で感じるあたたかさが不本意ながら心地良くて、 もうひとつのひだまりのよう (ああ、)とかされそうだ




yawn










(おねむネタが多いのは私の欲望です)