ふられちゃった、なんて開口一番に言うものじゃないな。 後ろから声をかけてきた柿本が一瞬目を見開いた後に呆れたような顔をするのを視界に入れながら ぼんやりと考えていた。ああ、声をかけたのは失敗だったと思われているに違いない。 「あ、そう」興味が無いなら横を歩いていないで早くどこかに行くなりしてほしい。 そういえば今日は城島と一緒じゃないんだ あいつと帰るなら私に構わず行ってくれるのに。 長い沈黙は続く。遠くで子供達のはしゃぐ声がきこえる。時々柿本は踵を引き摺る。 だめだ。空気が重すぎて申し訳なくなってきた。いや元はといえば柿本が私に声をかけたのが いけないのだ。 私は早く帰って枕に顔をうずめて声をあげて泣かなくてはいけないのだ。 そもそも柿本とは仲が良い訳でもないし城島を通じて知り合っただけで 二人で話すなんて事はまずないのになんで今日に限って柿本は自分から声をかけてきて 私も第一声にあんな事を言ってしまったのかわからない。今日は変だ。私も、柿本も。なによ。 なんだよ。私は悪くないのに。コンクリートの地面が歪む。「」空気漏れしたような声と同時に 後頭部をくしゃと軽く掴まれた。驚いて顔を上げると細長い骨ばった指は私の髪をといて静かに離れ、 頭ひとつ分上でそっぽを向いた彼の眼鏡を直した。「今日、犬が肉肉うるさいから…買い出し付き合って」 一人で荷物抱えるのめんどい、と付け足してさっさと歩いていってしまった。 丸まった背中を眺めながら、 私をひとりにさせないために気を遣ってくれているのか、とか、 本当は歩く速度がはやい奴だなあ、とか、 髪をなでた彼の指の感触を思い出しては少し目を細めた。 どこからか金木犀の香りがしてああ  夏が終わってしまったと思い知らされて鼻の奥がツンとしたけれど、 今日ぐらいは忘れてしまおうと思ってさっきより小さくなった背中を追いかけた。
「そういえばの髪、骸様のと同じ匂いがする」 げ、




Summer has ended.