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あ、
あめだ。
「あー、も傘忘れたんらー!」
「…いつまで理解に時間かかってるの」
下駄箱から土砂降りの景色を見ていると後ろから2人の声がきこえた。
「あ、犬。千種も」
私はずっと外を見て突っ立ってたらしい。
なんだか雨の日は空が重いし首元が心なしかべたべたするしなんだかユーウツ
だとかなんとか考えていたんだ。膝が軋む。灰色の世界に犬は不釣合いに元気な声を出した。
「今日雨降るなんて聞いてねーびょん!」
「ね、私も。愛ちゃんに嘘つかれた」
「だからってここでどうしてるつもり」
「え、どうって「走るよ」
頭に何かが被せられたと同時に千種に手首を掴まれて体が勢い良く引っ張られた。
あああこの2人は最初から走る気満々だったのだ。
「ちょっ、千種、私の家、あっち」「アジトの方が近い」
「遠いお前ん家まで送る気はないっての!」「それはそれは…」
ばしゃばしゃと3人分の足音が道に響く。
鞄が肩からずり落ちようが泥が跳ねようが手を引く千種に追いつくのに必死だった。
上着が私の頭にかかっているのでシャツが張り付いている彼の背中に視線を置く。
「バテんな!もうちょい我慢するびょん!」
不安定な呼吸が聞こえたのか、千種の横を走る犬が振り返って言う。
私は体育に滅多に出ないほど運動が苦手なのでもう無理です。
ケモノ並の君達とは違うんです。
ぶじゅ、と濡れた靴下が足を着く度に音を立ててとても不快な感触を与える。
足がもつれた。
「まったくは体力無さすぎですね」
「骸さん今日学校行ってないですよね」入り口でタオルを持って出迎えてくれた骸さんが
クフクフ笑う。その笑い声さえなければ普通に格好良いのに。
骸さんに言われると癪だけど自分でも体力の無さを嘆いた。
私はあれから2人に担がれて引き摺られるようにアジトに着いた。
「体力つけると同時に痩せた方がいいびょん」「あーあーあー」「耳ぱたぱたすんなようぜー」
犬が頭をぶるぶると振って水を飛ばした。
「ぎゃー犬冷たい!タオル使え」骸さんから受け取ったそれでわしゃわしゃと犬の頭を拭く。
後ろから私の頭に掛かったままの上着を取り上げて千種が不機嫌そうに言った。
「…、俺先にシャワー浴びたい」「え、あ、そうだよね …っていいよ私シャワーなんて!」
人様の、しかも男友達の家でシャワーを浴びるなんてしないでしょう普通!
私は硬派な人生を歩んでいる、ので!うん、ほら千種が上着を掛けてくれた分一番びしょ濡れだ。
「千種。が先です」「いいよ骸さん、私はあんまり濡れてな
「…骸様が言うなら」おーいおいおい私の意見は完全無視か。
腹が立ったので千種の背中を脱衣所まで押してやった。犬は拭いてやったし着替えれば大丈夫か。
とりあえず私に何か着替えを貸してください。
(なんだこれ、熊?)千種がシャワーを浴びている隙に脱衣所で骸さんに借りた服に着替える。
「千種」「…」シャワーの音に掻き消されて聞こえないのだろうか。
「ありがとね」「別に」聞こえてんじゃねーか。
犬と骸さんの元に戻ると2人してテレビに何かごちゃごちゃツッコミを入れていた。
「ちっげーよこれただ飼い主が無意識に合図送ってんらっての!掛け算とかできる訳ねーびょん」
「クフフ、少なくとも犬よりは頭が良いと思いますけどね」
「げー私その番組に出てるときのレベッカ嫌いなんだけど」
「おや、着替えましたか。似合ってますよ」この熊がか。
私も2人の横に座ってレベッカにちゃちゃいれしてやろうと画面を見る。
「…何3人とも目真っ赤なの」
千種は私達を見るなり顔をしかめた。
部屋に戻ってくるなりテレビに向かって号泣している3バカを見れば当然だ。
「らってペンペンが、ペンペンうまそうらけど…!」
「良い歳してウィッシュとか馬鹿みたいでしたけど彼はピュアーな心の持ち主だったんですね…!」
「やばいDAIGO惚れる。本気で結婚したい子供産みたい」
「なっ…何言ってるんですか破廉恥な!産むなら僕のこd
「そういえば風も出てきたし今日泊まっていけば」
ああそうだもうこんな時間だ。うっかりDAIGOに気を取られていた。というかさっきから君は
人の言葉に自分のそれを被せすぎだ。
「ううん、せっかくだけど根性で帰る。着替えありがとう、洗濯して返します」
「いいえは今日ここに泊まる事になっています。ご家族には連絡済みですよクフフフ」
「何勝手な事してるんですかパインアップル」
「さて、そろそろ4人分の食事が届く頃です。ピッツァターイム!」
華麗に無視しないで下さい。実はタートルズ世代だな年齢詐称男!
今頃酷使されている宅配の兄さんに同情しつつ、
朝まで止みそうもない嵐に多からずとも感謝した。
夜はこれから。
(なんだか続きそうです)
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