あいつが女性不信なのは知っていた。不信といってもあいつが女を怖がっている訳ではなく ただ単純に信じない、感情を抱かない、都合の良い止まり木としてしかその生き物を見ていない という事だ。、と膝を叩きながら名前を呼んでもあいつの中に私は映っていないのだ。 さっきまで触れていた肌も、体温も、匂いも、止まり木として場所を与えた女達への 愚かな褒美なのだと、知っていた。知っていたのに、 あいつが私の名前を呼ぶ時の、少しの甘味を含んだ響きが好きだった。 あいつの痣をなぞると髪を引っ張られるのが好きだった。 あいつの顔から一瞬笑みが消える、その瞬間が好きだった。 ああ、愚かなのはどっちだ。 はあ、と上に向かって白い息を吐き出した。冬の空は高くて澄み切っているはずなのに、 ベランダから見えるのは小さな夜空で星達は人工的な明かりに隠れて見えなくなった。 月はいつでも私を見下ろして、私を付け回す。 細く浮かぶ三日月があいつと重なって、嘲笑う声が今にも聞こえそうだったので 自分の影に視線を落として、やめた筈の煙草に火をつけた。 吐き出したものは煙か息か判らなかったけれど、このまま月を隠してしまえればいいと思った。